技術資料

Technical Data

ホールクロップサイレージ用稲

ホールクロップサイレージとは

ホールクロップサイレージ(Whole Crop Silage)とは、とうもろこしや稲のように、従来は子実をとることを目的に作られた作物を、繊維の多い茎葉部分と栄養価の高い子実部分を一緒に収穫してサイレージに調整したものです。こうして利用することにより、乳用牛や、肉用牛にとってバランスがとれ、栄養収量の高い飼料が生産できます。

ホールクロップサイレージ用稲栽培のねらい

転作飼料作物については、品質、収量性、コストの面からとうもろこしや牧草の生産が基本となりますが、これからの作物の生産条件を整えることがむずかしいところでは、以下の点から、ホールクロップサイレージ用稲の栽培と流通を推進しています。

既存の水稲栽培技術、機械施設、労働力等の資源を有効に活用して栽培を行うことができます。

排水対策を講じることが難しい圃場でも作付けができます。

水稲と他作物(大豆等)とのローテーションを取り入れる場合、乾田から水田 への移行間に有効です。

ホールクロップサイレージ用稲の特徴と調整・利用上の注意

1. 飼料価値と消化性

表は右にスライドします

単位:(%)
原物中の組成 消化率 栄養価
水分 CP EE NEE CF ASH CP EE NEE CF DCP thN
オーチャード
出穂期
80.8 2.7 1.1 7.4 6.0 2.0 67 62 64 72 9.4 64.1
とうもろこし
黄熟期
73.6 2.1 0.8 15.9 6.0 1.6 53 79 72 59 4.2 65.9
ソルガム
黄熟期
65.9 3.0 1.0 21.5 6.6 2.0 53 69 68 44 4.2 60.7
稲 糊熟期 65.2 2.7 1.1 17.3 9.1 4.6 54 62 66 50 4.3 54.6

CP:粗蛋白質、 EE:粗脂肪、 NEE:可溶性無窒素物、 CF:粗繊維、 ASH:粗灰分、 DCP:可消化粗蛋白質、 TDN:可消化養分総量。 単位はいずれも%。 栄養価は乾物中。
日本標準飼料成分表(1995年版)より作成。

2. ホールクロップサイレージ稲の調整

ア.収穫ステージ

乾物収量・栄養・サイレージ品質面から、収穫期は糊熟期~黄熟期が適当です。

イ.水分調整

収穫適期に達したものは、水分が60~70%に安定しており、サイレージ材料として予乾を必要としません。

ウ.収穫・密封

サイレージの品質向上のため、サイロ内容積を密にし、密封することが不可欠ですが、本作業機(カッティングロールベーラー、ベールラッパー)で収穫細断し、ラッピングすると省力的でより効果が上がります。

エ.サイレージ品質

三重県の分析では、フリーク法評点では高い評価をされませんでしたが、嗜好性は高く、栄養価も高い結果がでています。

3. ホールクロップサイレージ

給与量は1日1頭あたり10kgを目安とします。

二次発酵をを起こしやすいので、気温の低い時期に給与するようにします。

給与の切り替えは、1週間程度かけて徐々に行います。

ホールクロップサイレージ用稲の収穫調整作業実演会

  • ロールを機械の乗せるところです

    ロールを機械の乗せるところです

  • 機械に乗せてラッピングを開始するところです

    機械に乗せてラッピングを開始するところです

  • ラッピングを行っている最中です

    ラッピングを行っている最中です

  • 出来上がったものを運搬しているところです

    出来上がったものを運搬しているところです

  • 自走式ホールクロップロールベーラーです

    自走式ホールクロップロールベーラーです

  • 後ろの緑色の部分でロールが出来上がります

    後ろの緑色の部分でロールが出来上がります

平成11年度は酒田会場と長井会場の2ヶ所でおこなわれておりますが、ホールクロップサイレージ用稲の栽培を促進するうえで大きな障害のひとつになっているのが、収穫調整時期に天気が長続きせず、軟弱地盤水田では大型機械による作業が極めて困難な場合が多いこと、また、刈り取った飼料作物を一旦圃場に下ろすと土砂等が付着し、良質なサイレージの調整が難しいことです。 今回の作業機械は、三重県で開発・改良されたものが市販化されたもので、刈り取りながら梱包までを行う機械と、できたロールを包装する機械の2台が一連の作業を行います。