優良事例

Good Example

経営部門 肉用牛肥育経営

乳は土から搾る
~土地利用型酪農の実践~

今 作雄

4.経営の歩み

表は右にスライドします

(1)経営・活動の推移
年 次 作目構成 頭(羽)数 経営および活動の推移
昭和40 水稲40a 6頭 経営主就農
42 水稲40a 7頭 農業近代化資金を借入れ納屋を牛舎に改造
44 水稲40a 10頭 自己資金でミルカーを購入
47 水稲40a 10頭 経営主結婚
48 水稲40a 12頭 父から経営委譲を受け、サイロを2基新設
牧草地を150a新規造成
49 水稲40a 18頭 農業近代化資金で20頭牛舎を新築
乳牛5頭導入、飼料畑を20a購入
51 30頭 20頭牛舎を増築、サイロ1棟を新築
40aを全面転作し酪農専業経営に移行
自給飼料基盤の集積を開始
53 40頭 農業改良資金を借入れ、パイプラインミルカー方式を導入、
鮎貝酪農機械利用組合の設立(発起人)
簿記記帳開始
55 40頭 青色申告開始
58 40頭 バーンクリーナーの設置
59 40頭 コンプリートミキサーの導入
60 40頭 自己資金で飼料基盤10haの団地化を実現
平成3 47頭 60頭牛舎を新築
6 60頭 家族経営協定の締結
11 60頭 唐松堆肥生産組合による堆肥舎新築
13 60頭 長男就農
17 60頭  
(2)現在までの先駆・特徴的な取り組み

経営・活動の推移のなかで先駆的な取り組みや
他の経営にも参考になる特徴的な取り組み等

取り組んだ動機、背景や取り組みの実施・
実現にあたって工夫した点、外部から受けた支援等

①広大な自給飼料基盤による飼料費の低減

総面積19haの飼料基盤での自給粗飼料生産により、乳飼比33.2%、DM自給率55.7%、TDN自給率38.2%を確保する。これにより通年サイレージ方式が可能となり、低コストで安定した粗飼料生産により購入飼料費を大幅に低減している。

「乳は土から搾る」の基本理念をもとに、昭和50年代初頭から飼料基盤の集積に取り組んだ。当地域はかつて大養蚕地帯であったが、繭価の低落に伴い多くの桑園は荒廃していたことと、農業従事者の高齢化に伴い遊休農地が目立つようになっていたところに着目した。まず、自宅から0.9km程の荒廃桑園や遊休農地の集積を始めた。昭和55年のヨーロッパ視察研修を契機に更なる土地の集積化に取り組んだ。当該地は戦後の開墾地で0.5a区画の基盤整備地であり、それぞれの土地所有者からの承諾を得るため幾度となく足を運び理解と協力を求めた。承諾を得られない場合は、借地として借り受け、交換分合等も行いながら約10年をかけ10haの土地を団地化した。

集積した土地は上述したような荒廃桑園や遊休農地であったため痩せており、当初から土作りに重点を置き、堆肥や石灰の散布、プラウによる深耕などにより土壌改良に努めてきた。

昭和53年には同地区4戸の酪農家による鮎貝酪農機械利用組合を設立し、トラクターやモーア、ハーベスタ―などの大型自給飼料生産機械を導入。個人負担を軽減すると共にリスクの分散を図り、効率的な自給飼料生産と大幅な省力化を実現した。また、機械利用組合では河川敷地利用の申請も行い、昭和53年度から10haの最上川の河川敷草地を借り受け、さらなる飼料生産基盤の拡充を図った。

②良質自給粗飼料の生産とコンプリートフィーディングの実施

より高品質な自給粗飼料生産に努め、それを基に通年サイレージ方式でのコンプリートフィーディングを実施。採食性の向上により、経産牛1頭当りの年間産乳量は9,032㎏、平均乳脂率4.02%、平均無脂固形分率8.77%と良質で安定したな生乳生産を実現している。また、安定した飼料給与体系により飼養家畜の疾病などの発生も少なく、経産牛事故率も7.9%と低く抑えられている。

家族労働力総出に加え雇用も1人頼み、適期播種・適期刈取りを徹底し、迅速なサイレージ化を行うことにより生産した自給粗飼料の品質を維持している。

昭和60年のアメリカ視察研修の経験をもとに、同年にコンプリートミキサーを導入し、コンプリートフィーディングを開始。全酪連からの飼料設計指導により、デントコーンを主体とし濃厚飼料を極力抑えた「低タンパク・高カロリー」なコンプリート飼料給与体系を確立し、健全な牛群を維持している。

また、町内の農産加工工場等からりんご粕やとうふ粕を年間58tほど無償で譲り受け給与するなど、未利用資源を有効に活用している。腐敗し易いとうふ粕は、約20㎏づつ袋詰めをしてサイレージ化することにより、変敗を防止している。

③家族間の連携・絆

平成11年に白鷹町で最初の家族経営協定を締結し、家族間の連携を強めると共に各人の意欲の増進と能力の向上を図る。また、同時期に配偶者の養子縁組を行い、夫婦間の平等な関係づくりに努めている。

家族間の役割分担と責任を持たせるため家族間で話し合い、地域の農業改良普及センターや町農林課からの協力を得て締結した。