優良事例
Good Example
「肉用牛生産に雪国農業の未来を汗して」
JAみちのく村山 尾花沢肉用牛部会 代表 菅野 直也1.活動の概要
本事例は、畜産(肉用牛)を基幹作目とし、果樹、稲作を取り入れた複合経営であり、安定的な所得確保と適正な労働力の配分、更には、環境の保全と堆肥供給による地域農業との有機的な連携等に配慮した本県畜産複合経営の模範 事例となるものである。
牛部門の過去5年間(平成7~11年)の収支状況は、飼養頭数が40頭弱と規模としては大きくはないが、部門所得額が3,500千円~7,400千円、肥育牛1頭当り所得額が90~189千円と管内農家平均を上回り、高位水準にある。また、畜舎等の建設は古材を利用し、素牛導入も自己資本で対応し、70%以上の自己資本比率を確保するなど経営管理が優れている。
飼養管理技術をみると、平成7年は跂蹄による事故牛が2頭発生し、事故率も5.2%とやや高かったが、飼養形態を繋ぎ方式から2頭づつの群飼方式にきりかえたこと、また敷料を豊富に入れたこともあり、平成8年~11年の4年間の事故率はゼロになるなど、技術レベルの向上が顕著である。
過去5年間の素牛導入価格と販売価格をみると、導入価格は1頭当たり356千円、販売価格は912千円で、1日1頭当り増価額は788円である。特に、平成11年の増価額は977円で、県コンサル平均の600円と比較しても高く、飼養管理技術のほか素牛選定技術にも優れている。
環境保全については、牛舎は換気良く、牛床にはオガクズをふんだんに敷くなど乾燥に配慮し、牛体の清潔と悪臭発生の防止に努めている。また、牛舎の周囲が果樹園でもあり、環境汚染問題の発生は全くない。堆肥は、切り替えし熟成の後、農協肉牛部会の斡旋を通して、地域の果樹農家、耕種農家に提供し、土作りに資するなど地域農業に果たす役割には、大きなものある。
2.経営管理技術の特色及び取組み状況
昭和53年、家族(父)の死に伴うサラリーマンからの転業である。果樹と稲作の経営規模の小さな農業経営であったので、家族を支えるために35歳にして初めて肉用牛25頭を導入し、新たな周年農業への挑戦を開始した。
当初、技術力が追いつかず出荷肉牛の評価は、もう一つと言ったところであったが、昭和60年頃から共進会などでの入賞牛も出現するなど技術力が着々と備わり、自己資本の充実を図りながら漸次規模拡大を行っている。
牛肉の輸入自由化、あるいはバブル崩壊後の枝肉相場の低迷等により、経営収支の悪化が懸念されたが、新たな投資を抑えて古材利用による牛舎の改造や、飼育方式の改善(繋ぎ方式から2頭ずつのマス飼い方式へ)などにより、個体管理を強化し、肉質の向上や事故率の低減に努めてきている。
出荷は生体取り引きが中心であり、特定の顧客(関西方面主体の5業者)から比較的高価格での購買が永年にわたり行われている。このため、夫妻2人手分けして、常に牛舎を見回り、牛体の手入れを欠かさず行うほか、削蹄や健康管理には十分な注意を払っている。また、技術内容や肉質を把握するため、試験的に枝肉出荷も行っている。平成11年は4頭出荷し、販売価格が1頭当り985千円、枝肉1kg当り2,574円と良好な成績であった。なお、素牛は、できるだけ自分で選定導入を行うほか、半年に1回は全頭計量を行い、常に増体量、増価額を念頭に置きながら効率的な飼育管理を心がけている。
収益性の向上と財務内容を強化するため、飼料未払金や農協預託牛の優先返済をしており、その結果、平成11年の自己資本比率は90%となった。 また、畜舎や稲わらの収納舎等は古材利用で、しかも手作りの補修を行うなど、低コスト化につとめている。
畜舎は、換気良く敷料も豊富で乾燥し、汚水の流出や悪臭は全くない。 また、随時搬出されたボロは堆肥舎に堆積し、切り返しの際には撒水(一般的には水分除去が必要)を行い発酵を促進させ、堆肥の品質向上を図っている。堆肥は、地域の果樹農家へ販売もしくは稲わらとの交換を行っている。 長男(31歳)は、地元農業高校を卒業後、地元の企業に就職しているが、時には家畜管理の手伝いもするなど畜産への関心も高く、将来は後継者としての期待がもたれる。
3.経営の技術実績
期 間 | 11年1月~11年12月 |
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単位 | 経営実績 | 畜産会指標 | ||||
経営の概要 | 労働力員数 (畜産) |
家 族 | 人 | 2 | - | |
雇 用 | 人 | - | - | |||
肥育牛平均飼養頭数 | 肉用種 | 頭 | 40.2 | - | ||
年間肥育牛販売頭数 | 肉用種 | 頭 | 18 | - | ||
生産性 | 黒毛 和種 めす 若令肥 |
肥育開始時 | 日齢 | 日 | 270 | 270 |
体重 | Kg | 279.7 | 280 | |||
肥育牛1頭当り | 出荷時月齢 | カ月 | 32.2 | 32.0 | ||
出荷時生体重 | kg | 635.4 | 590.0 | |||
平均肥育日数 | 日 | 705 | 680 | |||
販売肥育牛1頭1日当り増体重 | カ月 | 32.2 | 32.0 | |||
対常時頭数事故率 | kg | 635.4 | 590.0 | |||
販売肥育牛1頭1日当り増体重 | kg | 0.500 | 0.450 | |||
対常時頭数事故率 | % | 0.0 | 3.0 | |||
販売肉牛1頭当り販売価格 | 円 | 1,070,684 | 830,000 | |||
販売肉牛生体1kg当り販売価格 | 円 | 1,685 | 1,400 | |||
枝肉1kg当り販売価格 | 円 | 2,574 | 2,200 | |||
肉質等級4以上格付率 | % | 100 | 80 | |||
もと牛1頭当り導入価格 | 円 | 382,083 | 350,000 | |||
もと牛生体1kg当り導入価格 | 円 | 1,366 | 1,250 | |||
肥育牛1頭当り投下労働時間 | 時間 | 79.2 | 40.0 |
4.施設等について
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手作りの牛舎
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古材を利用した
牛舎内の一部 -
2頭の群飼牛房